診療放射線技師法改正関連の情報ページです。

 診療放射線技師法改正関連の情報ページです。これまでの経緯や枠組みについて説明しています。

診療放射線技師法改正の概要

「良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制の確保を推進するための医療法等の一部を改正する法律案」が第204回国会(常会)において2021年5月21日に成立した。
 この法律案は、良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制の確保を推進する観点から、医師の働き方改革、各医療関係職種の専門性の活用、地域の実情に応じた医療提供体制の確保を進めるため、長時間労働の医師に対し医療機関が講ずべき健康確保措置等の整備や、地域医療構想の実現に向けた医療機関の取り組みに対する支援の強化等の措置を講ずることを目的としている。
 各医療関係職種の専門性の活用の中に、タスク・シフト/シェアを推進し医師の負担を軽減しつつ、医療関係職種がより専門性を生かせるよう各職種の業務範囲の拡大を行うこととされ、診療放射線技師法の改正も含まれている。

 法律案が成立したことを受けて、新たな診療放射線技師法は2021年10月1日から施行される。

 診療放射線技師の新たな業務は下記に示す6つの業務である。なお、これら業務の詳細な手技については、今後厚生労働省から通知が発出される予定となっているため、通知内容の詳細が分かり次第、広報していく予定である。

1)造影剤を使用した検査やRI検査のために静脈路を確保する行為、RI検査医薬品の投与が終了した後に抜針及び止血を行う行為
2)RI検査のためにRI検査医薬品を注入するための装置を接続し、当該装置を操作する行為
3)動脈路に造影剤注入装置を接続する行為(動脈路確保のためのものを除く)、動脈に造影剤を投与するために造影剤注入装置を操作する行為
4)下部消化管検査(CTコロノグラフィ検査を含む)のため、注入した造影剤及び空気を吸引する行為
5)上部消化管検査のために挿入した鼻腔カテーテルから造影剤を注入する行為、当該造影剤の投与が終了した後に鼻腔カテーテルを抜去する行為
6)医師又は歯科医師が診察した患者について、その医師又は歯科医師の指示を受け、病院又は診療所以外の場所に出張して行う超音波検査

「良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制の確保を推進するための医療法等の一部を改正する法律」の公布について

 2021年5月28日付医政発0528第1号により、「良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制の確保を推進するための医療法等の一部を 改正する法律」の公布について通知があった。
 診療放射線技師法の一部改正については下記の通り。なお、施行日は2021年10月1日となる。

1)診療放射線技師の業務に、放射性同位元素(その化合物及び放射性同位元素又はその化合物の含有物を含む。)を人体内に挿入して行う放射線の人体に対する照射を追加すること。(第2条第2項関係)
2)診療放射線技師が病院又は診療所以外の場所において業務を行うことができる場合として、医師又は歯科医師が診察した患者について、その医師又は歯科医師の指示を受け、出張して超音波診断装置その他の画像による診断を行うための装置であって厚生労働省令で定めるものを用いた検査を行うときを追加すること。(第26条第2項関係)

 本通知は、診療放射線技師法の改正についての通知となる。
 本会会誌4月号に掲載した「医師の働き方改革に伴う診療放射線技師の業務拡大と告示研修」にある通り、「診療放射線技師法施行規則(省令)の改正」については、今後厚生労働省から通知が発出されるので、ご注意頂きたい。
 なお、詳細については表1にまとめたので、参照のこと。

 RI検査のために静脈路を確保する行為、RI検査のためにRI検査医薬品を注入するための装置を接続し、当該装置を操作する行為については、法第2条第2項、医師又は歯科医師が診察した患者について、その医師又は歯科医師の指示を受け、病院又は診療所以外の場所に出張して行う超音波検査については、法第26条第2項が、それぞれ改正となっている。

表1 タスク・シフト/シェアを推進するために法令改正が必要な業務
   実施可能とする行為  対象法令
 1  造影剤を使用した検査やRI検査のために、静脈路を確保する行為、RI検査医薬品の投与が終了した後に抜針及び止血を行う行為 法律
省令
 2  RI検査のために、RI検査医薬品を注入するための装置を接続し、当該装置を操作する行為 法律
 3  動脈路に造影剤注入装置を接続する行為(動脈路確保のためのものを除く)、動脈に造影剤を投与するために当該造影剤注入装置を操作する行為 省令
 4  下部消化管検査(CT コロノグラフィ検査を含む)のため、注入した造影剤及び空気を吸引する行為 省令
 5  上部消化管検査のために挿入した鼻腔カテーテルから造影剤を注入する行為、当該造影剤の投与が終了した後に鼻腔カテーテルを抜去する行為 省令
 6  医師又は歯科医師が診察した患者について、その医師又は歯科医師の指示を受け、病院又は診療所以外の場所に出張して行う超音波検査 法律
 

告示研修について

 診療放射線技師の業務が追加されることに伴い、全ての診療放射線技師免許取得者に対する告示研修を実施することになる。
 この告示研修は7月中旬を目途に本会に対して厚生労働省から告示指定の通知が発出される予定となっており、これを受けて実施するのが告示研修である。
 告示指定は厚生労働大臣が指定する診療放射線技師に関する研修は本会の実施する研修であることを通知するものであり、全ての診療放射線技師が本会の告示研修を受ける義務が出てくる。

 本会としては、7月31日から告示研修が実施できるように現在準備を進めているところである。

 告示研修は基礎研修と実技研修からなり、基礎研修は700分、実技研修は385分の計1,085分となる。
 なお、実技研修385分のうち、実際症例などの動画視聴が165分、実技訓練は220分である。
 基礎研修については全てオンライン講義(オンデマンド)となるが、履修確認をすることが必要となるため、ログによる動画の視聴時間確認と視聴後の確認試験を実施する。
 実技訓練についてはシミュレーターなどを活用した対面による実習となるが、基礎研修が終了していない場合には実技研修を受講することができない仕組みとなる。

 今回の告示研修は義務研修になることから、診療放射線技師免許取得者約55,000人に対して告示研修が実施できるように十分な研修システムの構築と周知を行っていく予定である。

 今後、会誌やホームページなどの情報を常に確認していただきたい。

都道府県において実施する実技研修

 告示研修は7月31日より開始される予定であるが、都道府県において実施する実技研修については、10月以降から順次実施していく予定である。

 詳細については、会誌やホームページなどで広く周知する予定である。

診療放射線技師法改正までの経緯(ご参考)

法案の目的

 まず、法案の目的だが、「良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制の確保を推進する観点から、医師の働き方改革、各医療関係職種の専門性の活用、地域の実情に応じた医療提供体制の確保を進めるため、(中略)一部の法律が改正」された。

 具体的な立て付けを読み解くと、医師の働き方改革として、「長時間労働の医師の労働時間短縮及び健康確保のための措置の整備等」として、医療法の改正が行われるに伴い、各医療関係職種の専門性の活用として、「医療関係職種の業務範囲の見直し」として、診療放射線技師法の改正を含む、医療関係職種の専門範囲を拡大するための法令改正が行われた。
 つまり、タスクシフト/シェアを推進し、 医師の負担を軽減しつつ、医療関係職種がより専門性を活かせるよう各職種の業務範囲の拡大等を行うための法律改正ということだ。

これまでの業務拡大

 これまでにも、診療放射線技師における業務範囲の拡大は、「診療の補助」名目で、保助看法の規制解除により行われてきた。
 平成26年6月18日には、「地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための法律の整備に関する法律案」(医療・介護制度改正の一括法案)が、第186回通常国会においてに成立し、6月25日に公布された。
 この一括法案の中には、医療従事者の業務範囲および業務の実施体制の見直しとして「診療放射線技師法」も含まれており、診療放射線技師が実施する検査に伴い必要となるCT、MRI検査時の造影剤の血管内投与、投与後の抜針・止血の行為、下部消化管検査時などの肛門からのカテーテルの挿入などが、「診療の補助」として医師の指示を受けて行うものとし、業務範囲に追加された。
 また診療放射線技師が、病院又は診療所以外の場所において、健康診断として胸部エックス線撮影のみを行う場合に限り、医師又は歯科医師の立会いを求めないと明記された。
 さらに、核医学診断装置については、それまで法的に診療放射線技師の業務として明確になっていなかった点が、技師法第24条第2項の業務等に追加された。
 これらの業務拡大に対応すべく、公益社団法人日本診療放射線技師会では、全国一斉に統一講習会を実施し、拡大した業務への習熟体制を構築してきたが、これらは、現行法の範疇内で実施されるものであった。

タスクシフト/シェアを推進する今回の業務拡大

 今回の診療放射線技師法改正は、我々診療放射線技師をはじめとする、医療関係職種の専門性を活用することで、医師の負担軽減を目的とした、タスクシフト/シェアを推進するため、診療放射線技師法そのものを見直して、業務として行える行為を増やすことが盛り込まれた。

具体的に何が出来るようになるのか

 今回国会で成立した内容を、十分確認する必要があるが、下記の点が審議されており、このまま可決されたとすれば、我々の業務範囲として、これら行為が法的に認められることとなる。

・造影剤を使用した検査やRI検査のために静脈路を確保する行為、RI検査医薬品の投与が終了した後に抜針及び止血を行う行為。
・RI検査のためにRI検査医薬品を注入するための装置を接続し、当該装置を操作する行為。
・動脈路に造影剤注入装置を接続する行為(動脈路確保のためのものを除く)、動脈に造影剤を投与するために造影剤注入装置を操作する行為
・下部消化管検査(CTコロノグラフィ検査を含む)のため、注入した造影剤及び空気を吸引する行為
・上部消化管検査のために挿入した鼻腔カテーテルから造影剤を注入する行為、当該造影剤の投与が終了した後に鼻腔カテーテルを抜去する行為
・医師又は歯科医師が診察した患者について、その医師又は歯科医師の指示を受け、病院又は診療所以外の場所に出張して行う超音波検査。

法案成立と共に業務拡大が可能となるわけでは無い

 今回の業務拡大では、診療放射線技師法そのものが改正されることから、診療放射線技師籍登録者全員に法令に基づく「告示研修」(義務研修:厚生労働大臣が指定する受講必須の研修)が課せられる。
 本年10月1日に新たな診療放射線技師法が施行となることから、公益社団法人日本診療放射線技師会としては、告示研修の実施団体に指定(見込み)され次第、告示研修を順次開催する予定となっている。
 重要なことは、統一講習会のような、拡大業務の習熟を目的とした努力講習では無く、告示に基づく、必須の義務研修となることである。
 以上
(無断転載を禁止します。公益社団法人 日本診療放射線技師会)

 
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