第186回通常国会において 診療放射線技師法が 改正される!

平成26年6月25日公布,平成27年4月1日施行

会誌JART 2014年8月号より

 「地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための法律の整備に関する法律案」(医療・介護制度改正の一括法案)が,第186回通常国会において平成26年6月18日に成立し,6月25日に公布された.この一括法案の中には,医療従事者の業務範囲および業務の実施体制の見直しとして「診療放射線技師法」も含まれている.今回の診療放射線技師法の改正には,診療放射線技師が実施する検査に伴い必要となるCT,MRI検査時の造影剤の血管内投与,投与後の抜針・止血の行為,下部消化管検査時などの肛門からのカテーテルの挿入などについて,診療の補助として医師の指示を受けて行うものとし,業務範囲に追加される.また診療放射線技師が,病院又は診療所以外の場所において,健康診断として胸部エックス線撮影のみを行う場合に限り,医師又は歯科医師の立会いを求めないとされた.そして核医学診断装置については,これまで法的に診療放射線技師の業務として明確になっていなかったが,技師法第24条第2項の業務等に追加された.この中で「核医学診断装置」を用いた検査の追記, ならびに健康診断として胸部エックス線撮影時の医師の立会いを求めないという改正は「公布日」が施行日(平成26年6月25日)となっている.診療放射線技師の業務拡大については,平成22年4月30日付厚生労働省医政局長通知「医療スタッフの協働・連携によるチーム医療の推進の観点から 1.画像診断等における読影の補助 2.放射線検査等に関する説明・相談 ─が現行制度の下で実施する業務として挙げられた.その後,厚労省「チーム医療推進会議」の中で,看護師の特定医行為の問題,各専門職種の業務拡大が審議された.本会では,チーム医療問題検討委員会を立ち上げ, 平成23年の1月から3月にかけて全国的な業務実態調査を行った.このアンケート結果に基づき,厚労省の中に「診療放射線技師に関するワーキンググループ」が設置された.その結果がチーム医療推進会議で審議 され,さらに社会保障審議会医療部会(平成23年12 月22日開催)で取りまとめられた.それはCT,MRI 検査時の自動造影剤注入装置による造影剤の投与,検査終了時の抜針・止血,下部消化管におけるネラトン チューブの挿入,造影剤・空気等の注入であった.その後のチーム医療推進会議において,画像誘導放射線治療(IGRT)時の肛門へのカテーテルの挿入,空気の吸引が検査関連行為が追加され,さらに核医学関連機器を使った検査が法的に明確になった.また診療放射線技師法第26条第2項の関係であるが,エックス線検診車における胸部の健診において,医師の立会いが必要でないことが第36回社会保障審議会医療部会(平成25年11月22日開催)で取りまとめられた.これらの診療放射線技師法改正については,医療と介護の一括法案として,平成26年2月12日に第186回通常国 会に提出されるに至ったものである.

技師法第24条第2項の(1)についての改正

技師法第24条第2項の(1)の装置として,新たに 「政令」に「核医学診断装置」が追加

技師法第24条第2項の(1)の装置として,新たに 「政令」に「核医学診断装置」が追加され,
・磁気共鳴画像診断装置
・超音波診断装置
・眼底写真撮影装置(散瞳薬を投与した者の眼底を撮影するものを除く.)
・核医学診断装置
の四つの装置となった.

技師法第24条第2項の(2)についての改正

技師法第24条第2項の(2)関係の診療の補助として行える行為は,省令で定められる.以下の行為が検査に関連する行為として,業務範囲に加わることとなる.(平成27年4月1日施行)

造影剤の血管内投与に関する業務

(i)CT検査,MRI検査等において医師又は看護師により確保された静脈路に造影剤を接続すること及び
  造影剤自動注入器を用いた造影剤投与を行うこと.
(ii)造影剤投与終了後の静脈路の抜針及び止血を行うこと.

下部消化管検査に関する業務

(i)下部消化管検査に際して,カテーテル挿入部(肛門)を確認の上,肛門よりカテーテルを挿入すること.
(ii)肛門より挿入したカテーテルより,造影剤及び空気の注入を行うこと.

画像誘導放射線治療(image-guided radiotherapy : IGRT)に関する業務

(i)画像誘導放射線治療に際して,カテーテル挿入部(肛門)を確認の上,肛門よりカテーテルを
  挿入すること.
(ii)肛門より挿入したカテーテルより,空気の吸引を行うこと.

技師法第26条第2項についての改正

 診療放射線技師が,病院又は診療所以外の場所で,多数の者の健康診断を一時に行う場合において,胸部エックス線検査(コンピュータ断層撮影装置を用いた検査を除く.)その他の厚生労働省令で定める検査のため,100万電子ボルト未満のエネルギーを有するエックス線を照射する場合は,医師又は歯科医師の立会いがなくても実施できるものとされた.

検査に関連する行為を行う際の教育について

 検査に関連する行為を実施する場合の条件として,社会保障審議会医療部会で「教育内容等の見直し」が求められた.

1)関係法令・通知などを改正し,検査等関連行為を安全かつ適切に行うために必要な教育内容を現行の教育内容に配慮しつつ追加する必要がある.
2)既に診療放射線技師の資格を取得しているものについて,医療現場において検査等関連行為を実施する際には,医療機関や職能団体等が実施する教育・研修を受けるよう促すことで教育内容を担保する必要がある.

以上2点が示された. 本会では 2)の指摘を受け,現在,「静脈注射(針刺しを除く)講習会」ならびに「注腸検査統一講習会」 を開講しているところである. 今後,厚労省内の「業務拡大に伴う教育に関する検討会」より「診療放射線技師の教育内容についての提案」が出されるが,本会としてもこの提案に沿った研修会の整備を行うこととなるだろう.

胸部検診業務において医師の立会いがない場合の条件

 今回の診療放射線技師法の一部の改正に伴い「がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針」が改正され,平成26年6月25日付健康局長通知が出された.この指針の中で,胸部エックス線撮影の際に医師の立会いがなく実施する場合は,以下の点を遵守する必要がある.

1)検診の実施に関し,事前に胸部エックス線写真撮影を行う診療放射線技師に対して指示をする責任医師及び緊急時や必要時に対応する医師などを明示した計画書を作成し,市町村に提出する.なお,市町村が自ら検診を実施する場合には,当該計画書を自ら作成し,保存する.
2)緊急時や必要時に医師に連絡できる体制を整備する.
3)胸部エックス線写真撮影時や緊急時のマニュアルを 整備する.
4)胸部エックス線検査に係る必要な機器及び設備を整備するとともに,機器の日常点検等の管理体制を整備する.
5)検診に従事する診療放射線技師が必要な教育・研修を受ける機会を確保する.

関係政令・省令の公布(平成27年2月17日)

ページトップへ