公益社団法人 日本診療放射線技師会 会長 上田 克彦

 2014年6月18日に診療放射線技師法の一部改正が行われ、2015年4月1日に施行されました。拡大された具体的な業務内容は、(1)CT・MRI検査等での自動注入器による造影剤の注入、造影剤投与後の針の抜針・止血、(2)下部消化管検査の実施(ネラトンチューブ挿入も含めて)、(3)画像誘導放射線治療時の腸内ガスの吸引のためのチューブ挿入です。以上の業務を行うための絶対条件として、医療の安全を担保することが求められています。そのため、日本診療放射線技師会としては、“業務拡大に伴う統一講習会”と称し、必要な知識、技能、態度を習得することを目標とした講習会を企画開催してきました。
 2015年4月1日に診療放射線技師学校養成所指定規則が見直され、学校または養成所の教育内容の基準について、単位数が93単位から95単位へ変更されました。内容は、専門基礎分野の「人体の構造と機能及び疾病の成り立ち」が1単位増加し、さらに専門分野の「医療安全管理学」が1単位として新設され、感染管理および医療安全、特に造影剤投与によるアナフィラキシーなど重篤な合併症の発生時に一次救命処置(Basic Life Support :BLS)が適切に実施できる技能が含まれました。これらの新カリキュラムの単位を学生として習得した皆様は、既に様々な医療現場で診療放射線技師として活躍されていることと思います。
既卒の診療放射線技師の皆様には、厚生労働省における診療放射線技師教育内容検討会で審議いただいた追加講習カリキュラムに基づき、「法律・倫理に関する知識」「造影剤の血管内投与静脈路の抜針・止血に必要な知識・技能・態度」「下部消化管検査に関する業務に必要な知識・技能・態度」「画像誘導放射線治療(image-guided radiotherapy :IGRT)に関する業務に必要な知識・技能・態度」「試験」を実施しています。
 日本診療放射線技師会では、47都道府県(診療)放射線技師会と連携し、本講習会を5年間にわたり継続的に実施しました。その結果、2020年3月末時点では60%を超える会員の皆様に受講いただき、非会員を含めて約20,000人の診療放射線技師の皆様に修了証書をお渡しすることができました。お力添えをいただきました47都道府県(診療)放射線技師会ならびに全国理事・地域理事・地域教育幹事・全国の教育委員・全国の講習会指導者およびスタッフの皆様には心より敬意を表します。そして開催にあたりご理解いただきました会員・非会員のすべての皆様に厚く御礼申し上げます。
 医療現場に立つものとして、私たち診療放射線技師が行う医療行為には重大な責任があり、何よりも患者の安全を最優先に考える必要があります。日本診療放射線技師会としては、厚生労働省と協議の上、今般の法改正について、すべての診療放射線技師に教育・研修の場を提供することが役割であると考え、本講習会の開催を継続しています。
 本講習会が診療放射線技師の皆様の知識・技術となり、チーム医療および社会に貢献し、国民に質の高い医療が提供できることを切に願っています。
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