放射線被ばく相談員講習会開催される

ニュース
2015.04.01

放射線被ばく全般の相談を担当する「放射線被ばく相談員」

 本会では、全国の診療放射線技師会に医療被ばく相談員を配置し、放射線検査に不安を持たれた方々の被ばく相談などに対応している。平成23年3月11日に発生した東京電力福島第一原子力発電所事故以降、自然環境の放射線被ばく、食物を通じての放射線被ばくに関する質問も増えたことに対応するため、放射線被ばく全般の相談を担当する「放射線被ばく相談員」の講習会を開催した。
 2月13日(金)から15日(日)の講習会では、外部被ばくと内部被ばくの違いを踏まえ、放射線災害時の被ばく相談を考慮した「リスク・コミュニケーション」「傾聴訓練の実習」、最終日に認定試験を行った。次回は、平成27年7月に開催を予定している。

第2回放射線被ばく相談員講習会(印象記)

法花堂 学 -市立横手病院-

 爽やかな青空の下、日本診療放射線技師会事務所 講義室において第2回放射線被ばく相談員講習会が開催され、全国から集まった30人の放射線管理士と共に参加させていただきました。2001年AJRに掲載されたBrenner論文を契機とし、福島第一原子力発電所事故による環境汚染に至る現在まで、国民の放射線に対する不安は根強いものがあり、原発立地県をはじめとした一般住民、あるいは医療現場における被ばく相談への対応力向上と、それを担うマンパワーはさらに求められていくであろうと感じます。本講習会はこのような放射線被ばく全般の相談に対応できる相談員の育成をするための机上講義と、カウンセリングに準じた傾聴実習からなる3日間のプログラムで構成されていました。

 放射線災害における被ばく相談では、高いリスク・コミュニケーション能力とカウンセリング能力が求められます。相談者が抱くさまざまな気持ちに寄り添い、必要な情報を正しく正確に伝え、相談者自身が主体的にプラスの方向に向かうことが目標となります。カウンセリングとは、言語的および非言語的コミュニケーションを通して、相談者の行動変容を援助する人間関係であるといわれておりますが、このカウンセリング関係を作る基礎として傾聴が重要視されます。傾聴はコミュニケーションを通じて相談者を理解しようとする営みと定義され、さまざまな技法を用いて信頼関係を構築し、相談者の自己理解を促進させて新たな方向性を見い出すための受容と共感が必要とされ、根底には倫理的に十分配慮されたものであることが理解できました。

 実習では傾聴の第一段階である相談者との良好な関係性構築を重点的に行いました。聴き手側の視線・動作・態度・着座位置が話し手に与える影響を体感するセッションを行い、聴き手の振る舞いが話し手にどのように受け取られるかが、良好な関係性構築とその後のコミュニケーションの促進に影響を及ぼすことが体感できました。傾聴がもたらす「あなたに関心を向けていますよ」という姿勢、気持ちに寄り添う姿勢は被ばく相談のみならず日常の業務においても活用できるため、全ての診療放射線技師に持ってほしいスキルであると考えます。

 放射線への不安を抱えた相談者に適切に対応できるのは私たち診療放射線技師であり、その専門性を十分発揮するスキルを備える必要性を感じていましたが、今回の講習で相談者のニーズにどのように向き合い、どのような手順でどう伝えるかを体系的に学習する機会が得られ有意義なものとなりました。このような機会を頂いた日本診療放射線技師会および日本放射線カウンセリング学会の皆さま、講師の皆さまにお礼申し上げます。

目黒 靖浩 -(公財)北海道労働保健管理協会-

 2月13日(金)から15日(日)までの3日間、好天に恵まれた日本診療放射線技師会事務所 講義室で、放射線被ばく相談員講習会が開催されました。医療被ばく線量測定の講習会には受講生としてもスタッフとしても参加経験はありましたが、今まで受けたものや今後受けるであろう放射線被ばく相談の対応を考えた時に、ある程度体系化した講習会があればと常々考えていました。今回、機会を得て参加することができました。
 講習は諸澄先生の放射線被ばくの測定方法に始まり、内部被ばく・外部被ばく、放射線の影響についての説明があり、それに被ばく相談員の倫理、災害時の被ばく相談など実践に裏打ちされた講義が続きました。相談員の倫理では、なぜ人を殺してはいけないのかという倫理の根源に関わる問い掛けがあり、被ばく相談の実践では話の聞き方、説明プラン、分析方法など大変密度の濃いものでした。
 また原発事故による避難生活とメンタルヘルスの講義では、原発事故避難者の現況、抱えている問題といった放射線被ばく以外の現実問題がいかにメンタルヘルスに関わってくるかが説明され、リスク・コミュニケーションの講義においても事故後に求められることについて問題提起がなされました。
 被ばく相談には傾聴の重要性が指摘されますが、今回は臨床心理士の方から傾聴の技法や問題点なども講義を受け、実際に体験型学習として傾聴訓練を2日間にわたって体験することができました。傾聴訓練では6人程度のグループに分かれ、インストラクターの指導の下、他人から見た自分の姿、そしてそれをどのように感じ取るかを身をもって知ることができたのは大変貴重な体験でした。
 3日間の講習は結構ハードでしたが、本講習を通じて被ばく相談員として求められる知識・技能についてあらためて認識することができました。今後、認定だけではなくスキルのアップにつながる講習会の開催に関心を向け、相談員として被ばく不安の低減に貢献するよう努力していきたいと考えています。
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